なんてことない世界の果てで

なんだかんだで毒ばかり

見栄っ張りって嫌いじゃない

題名のとおり、見栄っ張りだという人は嫌いじゃない。

夫や妹と話していると、時々見栄っ張りな人の話が出てくるのだが、その度に「張れる見栄があるっていいことだと思う」と言っている。本当にそう思っている。

 

 

 

私の夫は正真正銘の見栄っ張りだ。

とにかくブランドの服が好きだ。名のあるホテルでディナーをするのが好きだ。安く安全な互換性のある製品があったとしても絶対に純正品を買うし、Xmasや誕生日には、惜しげも無く良いものをプレゼントする。パッと見全然分からないのに、車にめちゃくちゃお金をかける。やっと買えたよ~!といって15万くらいするジャケットを買う。

でもうちは全然お金持ちじゃない。

夫のお小遣いは月3万円で、頑張りに頑張ってそれだけの見栄を張っている。

DiorやらBALENCIAGAやらマルジェラやらの服を子供たちに汚されないように、普段はユニクロやH&Mのセールで買った500円のTシャツを着ている。絶対にお弁当を持っていくし、お酒は大好きだけど飲み会は会社のしか行かないし(社長の奢りだから)、吉野家大好きだし、タバコもやめた。ジムにかよい、周辺をランニングし、家で簡単な筋トレをする。お小遣いの中から私や子供にお土産を買ってくる。時々安くとも三人の子供たちにおもちゃを買ってやる。私に服を買ってくれる。まったく天晴だと思う。

 

 

私はそうやって見栄を張るのはすごく良いことだと思う。

本当はブランド物が欲しいのに、オシャレなホテルディナーとかしたいのに、メイクだってデパコスで揃えたいのに、と思っていながら、「今どきブランドに拘るってダサい」とか「お金持ちはいいわねぇ、うちは子供にお金がかかって美容室なんて半年も行ってない」とか愚痴るより全然いい。超健全。ガンガン見栄張ればいいと思う。

 

 

ここで勘違いして欲しくないのは、確かに「ブランドにただこだわるのは本当にダサい」ということがひとつ。

例えばコピー商品を本物と偽って友人達に自慢するとか、本当はレンタルしたブランド物なのに、自分のものだと嘘ついてSNSにアップするとかは本当にダサいし痛いからやめた方がいい。

死ぬほどバイトして買ったバッグとか服を「彼氏が買ってくれたの」とか言うのも痛い。それは見栄っ張りじゃなくて虚言症なので早めにカウンセリングを受けた方がいい。大から小まで嘘つく人生になりますよ。

 

 

あともうひとつ、「本当は自分も欲しいのに、憧れがあるのに」見栄っ張りを貶す人がダメなのであって、全くブランド物やホテルディナーを必要としていない人がいるのは承知しておきたい。というか私がこのタイプである。

 

 

今はもう友人ではないのだが、私の過去の友人にも見栄っ張りな子がいた。いつも完璧にメイクし(いつもデパートのコスメカウンターで、最新のコスメを購入していた)、髪は神々しく巻かれ、美容室で手入れされた艶艶しい毛先は美しく、枝毛ひとつなかった。靴底の赤いハイヒールを何種類も持っていて、財布とスマホだけしか入らないような、誰もが名前を知っているブランドのバッグを持っていた。

今でも鮮明に覚えているのだが、一緒に映画を見に行く約束をしていた日の前日、「明日行けそうにない」とその子から電話がかかってきた。どうしたの、具合が悪いのと聞くと、違うと言う。「どうしても欲しいコスメがあるんだけど、たくさんのブランドから限定ばかり出るものだから、節約しなくちゃいけなくて1ヶ月くらいチキンラーメンとキャベツだけ食べて凌いでたの。そうしたらフラフラになっちゃって」と言う。もう好きだ、と思った。見栄っ張りなのに正直だし、見栄に努力が透けて見える。飯食えよ、と思う。聞けばそのコスメのために8万円は使う予定だという。人にはいろんな価値観があるなと感じた出来事だった。